2012年09月24日
ボンレスハムって...? (2)
昨日(9月23日)のテレビ朝日の番組「シルシルミシルさんデー」で
日本ハムさんの工場の様子が放映されました。
見られたも多いと思います。
さすが日本一の食肉加工メーカー、弊社とは規模が全然ちがいます。
ハムやソーセージの作業工程やそこで使われる機械は
大きさこそ負けるものの概ね同じですが、
工程から工程への材料や製品の移動はこちらは人の手でやります。
そのへんがやはり大手さんだなと感じました。
さて、前回に続き、ボンレスハムができるまでを見ていきましょう。
これはタンブリングマシンと呼ばれる、肉を熟成させるための機械です。
あらかじめ塩、砂糖、香辛料を溶かした調味液*で味付けされたもも肉を
大きい樽のようなこの機械の中で回転させ、その後一晩寝かせます。
これにより肉はやわらかく熟成されます。
*弊社ではこの工程で発色剤(亜硝酸ナトリウム)を使わないため、
できあがった製品は「無塩せきハム」と呼ばれます。
ここがまぎらわしいところなのですが、塩が入っていないわけではありません。
一晩たったお肉をタンブリングマシンから取り出し、ナイフで整形処理したものがこれです。
肉の表面に溶け出したたんぱく質の粘りが出ています。
この肉をケーシングに詰めて台車に吊り下げます。
いよいよ焼き上げます。
こちらがスモークチャンバーです。
ドイツから船に乗ってやってきました。
この部屋の中で行なわれている作業は以下の通りです。
1: 乾燥 次に行なわれるくん煙で色をつけやすくするために肉の表面を乾燥させます。
2: くん煙 肉を煙でいぶします。保存性を高め、よい香りと色をつけます。さくらのチップが使われます。
3: 蒸煮(じょうしゃ) 蒸気で肉の中まで加熱します。
4: 冷却 冷たいシャワーを当てて急速に冷やし、肉を引き締め、微生物の繁殖を防ぎます。
そして完成!
もうもうと立ち込める蒸気の向こうに見える影。。。
おお! この焼き色!
これをスライスパックして、生協の組合員のみなさんにお届けしています。
ところで、ボンレスハムの「ボンレス」の意味をご存知ですか?
豚もも肉を加工してできることはおわかりいただけたかと思いますが。。。
図: 東京都中央卸売市場食肉市場のホームページより
ロースハムは、 ロース肉 から作られます。 ------そうです。
バラベーコンは、 バラ肉 から作られます。 ------そうです。
ボンレスハムは、 ボンレス肉 から作られます。 ------えっ?!
なにかちがう気が。。。
ではここで、豚のもも肉でつくった別のハムの写真を見てみましょう。
写真: (社)日本食肉協議会「食肉加工品の知識」より
一見してちがいがわかるかと思います。
こちらは骨つきのももハムです。
「骨」を英語では? "bone(ボーン)".
そう、ボンレスハムは "bone-less"、つまり、「骨がない」からきているのです。
豚もも肉で作った、骨のないハムのことを、「ボンレスハム」と呼ぶとおぼえてください。
豚もも肉で作ったボンレスハムはハムの王道をいくものです。
ロースハムに比べて脂肪も少なく、サンドイッチにするにはもってこい、女性にも人気です。
スーパーやデパートの食料品売り場でボンレスハムを見かけたら、
この記事を思い出していただけるとうれしいです。
日本ハムさんの工場の様子が放映されました。
見られたも多いと思います。
さすが日本一の食肉加工メーカー、弊社とは規模が全然ちがいます。
ハムやソーセージの作業工程やそこで使われる機械は
大きさこそ負けるものの概ね同じですが、
工程から工程への材料や製品の移動はこちらは人の手でやります。
そのへんがやはり大手さんだなと感じました。
さて、前回に続き、ボンレスハムができるまでを見ていきましょう。
これはタンブリングマシンと呼ばれる、肉を熟成させるための機械です。
あらかじめ塩、砂糖、香辛料を溶かした調味液*で味付けされたもも肉を
大きい樽のようなこの機械の中で回転させ、その後一晩寝かせます。
これにより肉はやわらかく熟成されます。
*弊社ではこの工程で発色剤(亜硝酸ナトリウム)を使わないため、
できあがった製品は「無塩せきハム」と呼ばれます。
ここがまぎらわしいところなのですが、塩が入っていないわけではありません。
一晩たったお肉をタンブリングマシンから取り出し、ナイフで整形処理したものがこれです。
肉の表面に溶け出したたんぱく質の粘りが出ています。
この肉をケーシングに詰めて台車に吊り下げます。
いよいよ焼き上げます。
こちらがスモークチャンバーです。
ドイツから船に乗ってやってきました。
この部屋の中で行なわれている作業は以下の通りです。
1: 乾燥 次に行なわれるくん煙で色をつけやすくするために肉の表面を乾燥させます。
2: くん煙 肉を煙でいぶします。保存性を高め、よい香りと色をつけます。さくらのチップが使われます。
3: 蒸煮(じょうしゃ) 蒸気で肉の中まで加熱します。
4: 冷却 冷たいシャワーを当てて急速に冷やし、肉を引き締め、微生物の繁殖を防ぎます。
そして完成!
もうもうと立ち込める蒸気の向こうに見える影。。。
おお! この焼き色!
これをスライスパックして、生協の組合員のみなさんにお届けしています。
ところで、ボンレスハムの「ボンレス」の意味をご存知ですか?
豚もも肉を加工してできることはおわかりいただけたかと思いますが。。。
図: 東京都中央卸売市場食肉市場のホームページより
ロースハムは、 ロース肉 から作られます。 ------そうです。
バラベーコンは、 バラ肉 から作られます。 ------そうです。
ボンレスハムは、 ボンレス肉 から作られます。 ------えっ?!
なにかちがう気が。。。
ではここで、豚のもも肉でつくった別のハムの写真を見てみましょう。
写真: (社)日本食肉協議会「食肉加工品の知識」より
一見してちがいがわかるかと思います。
こちらは骨つきのももハムです。
「骨」を英語では? "bone(ボーン)".
そう、ボンレスハムは "bone-less"、つまり、「骨がない」からきているのです。
豚もも肉で作った、骨のないハムのことを、「ボンレスハム」と呼ぶとおぼえてください。
豚もも肉で作ったボンレスハムはハムの王道をいくものです。
ロースハムに比べて脂肪も少なく、サンドイッチにするにはもってこい、女性にも人気です。
スーパーやデパートの食料品売り場でボンレスハムを見かけたら、
この記事を思い出していただけるとうれしいです。
2012年09月17日
ボンレスハムって...? (1)
なかなか秋めいてこない今日この頃です。
デジカメのメモリーを整理していたら夏に撮った写真が残っていました。
これは夏の空き時間を利用しての研修です。
豚のもも肉の塊を内モモ、しんたま、外モモ、らん、といった部位に分けていきます。
これらの部位は筋膜でくっついているので手ではがすこともでき、
包丁を入れるのに力はいらないそうです。
工場長の指導の下での研修です。
部位に分けられたものです。
さらにここからトリミングを行い、すじやあぶらなどが取り除かれ、
実際にハムになるのは下のお肉です。
通常仕入れるモモ肉はこの状態で入荷されます。
見ておわかりの通り、あぶらの少ないお肉です。
このお肉がボンレスハムになっていきます。
< つづく >
デジカメのメモリーを整理していたら夏に撮った写真が残っていました。
これは夏の空き時間を利用しての研修です。
豚のもも肉の塊を内モモ、しんたま、外モモ、らん、といった部位に分けていきます。
これらの部位は筋膜でくっついているので手ではがすこともでき、
包丁を入れるのに力はいらないそうです。
工場長の指導の下での研修です。
部位に分けられたものです。
さらにここからトリミングを行い、すじやあぶらなどが取り除かれ、
実際にハムになるのは下のお肉です。
通常仕入れるモモ肉はこの状態で入荷されます。
見ておわかりの通り、あぶらの少ないお肉です。
このお肉がボンレスハムになっていきます。
< つづく >
2011年12月15日
ハムを読む(後編)
前回に引き続き、一般に出回っているハムの原材料を解説します。
前回は大豆たん白、卵たん白など〇〇たん白の説明をしました。
安定した製品を大量生産するのに使われること、
また、加水の補助に使われることがおわかりいただけたかと思います。
次に「還元水あめ」ですが、その名のごとく、糖類の一種です。
糖類として使われるものにはこのほかに「砂糖」「水あめ」があります。
これらには甘味料としてばかりではなく、保存性を高める働き、
塩かどを取り味をまとめる働きなどがあります。
還元水あめはよくキャンディーやガムに使われている「パラチノース」「キシリトール」などと同じ、
「糖アルコール」と呼ばれるグループに属しています。
「水あめ」はでんぷんから作られていますが、この還元水あめはその水あめから作ります。
水あめ同様、砂糖よりも甘さがなく、カロリーも少ないです。
原料はとうもろこし、じゃがいも、さつまいものでんぷんであることがが多いようです。
砂糖と同様に保湿性があるので製品をしっとりした感じにできます。
この保湿効果により微生物や菌の繁殖する環境(「自由水」といいます)
ができにくくなり、製品が長持ちします。
砂糖より甘みが少ないので、たくさん使うことができ、
砂糖並みの甘さで保存性の高い製品に仕上げられます。
左は粉末水あめ、右は上白糖です。
水あめも還元水あめも見た目は同じです。
水あめの方はこのまま置いておくと湿気を吸ってべとべとしてきます。
弊社で使われている水あめはタピオカのでんぷんから作られます。
「たん白加水分解物(大豆、豚肉を含む)」「調味料(アミノ酸等)」と記載されています。
前者もアミノ酸が主成分ですのでここでは「アミノ酸」ということでひとまとめにして考えます。
アミノ酸はうまみ成分で、いろいろな食べ物にしばしば使われます。
前回〇〇たん白を加えて製品の均一化を図るお話をしましたが、
たんぱく質自体には味がなく、また加水もされるといったことで味のバランスが損なわれることがあり、
そういった場合にアミノ酸を加えて味をととのえます。
「発色剤(亜硝酸Na)」、「コチニール色素」はその名の通りハムをきれいなピンク色にする素材です。
前者については無塩せき製品とそうでないものを区別する分かれ目で、
これが入っていないものを鎌倉ハムクラウン商会で作っている「無塩せき」製品と呼びます。
発色剤にはボツリヌス菌の発生を防いだり、
ハム・ソーセージ特有の熟成した香りを出す効果があります。
昔ヨーロッパでは食肉加工に岩塩を使いましたが、もともとその中に含まれていた成分です。
日本では一般的に精製塩を使うため、食品添加物として発色剤を別に加えます。
この発色剤ですが、肉のたんぱく質にのみ反応するため、
〇〇たん白を使った製品ではその粉の黄色が残ってしまい、
スライスパックにした時には見ばえが落ちることがあります。
また、製品の見ばえは加水によっても変わってきます。
そこでコチニールのような色素をあらかじめ調味液に混ぜて使います。
また「酸化防止剤(ビタミンC)」ですが、色の安定、発色の促進のために使われるほか、
保存性を高める目的でも使われます。
コチニール色素の元はサボテンに付く虫です。
(カイガラムシ科のエンジムシ)
これを乾燥させたものから抽出、精製します。
以上、ハムの内容表示を見てみました。
ひとつひとつ手作りされるお菓子のようなものから、工場で大量生産される冷凍食品まで、
世界中で毎日無数の製品が作られています。
それらには常に同じ品質が求められますが、
原材料には本来自然なばらつきがあり、特に量産型の工場ではそれを均一にすることはできません。
また、スーパーマーケットやデパートの食料品売り場での買い物が一般的になった昨今では、
牛乳や豆腐のように毎日確実に売れるようなものでなければ、
メーカーは保存性を高める工夫をしなくてはなりません。
そのためにある程度の添加物や調味料を使うことは、やむを得ないことでもあるでしょう。
他方、私たち鎌倉ハムクラウン商会の製品は豚肉に塩、砂糖、香辛料のみで作られているため、
日持ちがせず、温度管理もデリケートということで、
生協の宅配、学校給食、通信販売でのみ取り扱っていただいています。
時と場合に応じて使い分けされて、食卓をよりよいものにしていただければと思います。
Posted by 鎌倉ハムクラウン商会 at
16:35
│ハム・ソーセージについて
2011年05月18日
ハムを読む(前編)
筆者が加工肉メーカーに勤めていると言うと、たまに「どんなハムがおいしいの?」と聞かれます。
難しい質問です。味覚はひとそれぞれちがいますし、
私もそう頻繁に他社さんのものを食べるわけではありません。
結果、こう答えることが多いです。
「豚肉以外のたんぱく質が使われているか、でしょうか。」
商品の内容表示にはなかなか想像力をかき立てるものがあります。
どうやって作っているのか、これは何のために入っているのかなどなど。
今回から2回に分けて、架空のハムを使って原材料表示を読んでみたいと思います。
キーワードは「水」です。
筆者が手にした▲社のロースハムの原材料表示はこのようになっていました。
一般にお店で手に入れやすいものはおおよそこのような内容だと思います。
はじめに気がつくことは▲社のハムにはたくさんの原材料、添加物が使われていることです。
鎌倉ハムクラウン商会で通常作っているロースハムの原材料表示は
「豚ロース肉、食塩、砂糖、香辛料」ですので、その差は歴然としています。
もちろん、両者とも食べていけないものは入っていません。
鎌倉ハムクラウン商会で作っている
無塩せきロースハムの原材料表示)
「〇〇たん白」というのがいくつもあります。
これらには乳化、結着、保水、食感を向上させるといった効果があります。
肉を加熱するとその中のたんぱく質が凝固します。
ハムであれミートボールであれ、それによって形の崩れない物となります。
大豆たん白、卵たん白、乳たん白も同じことで、熱を加えれば固まります。
豚肉はなまものなので個体からくる質のばらつきがあり、それが製品に影響します。
そこで安定した物をを大量生産するにはこれらのたん白を混ぜることがとても有用です。
鎌倉ハムの無塩せきウインナーの原料肉です。
肉挽きしてどろどろですが
腸に詰めて加熱すれば固まります。
ただ、役に立つだけにたくさん使われることがあります。
ハムの製造工程で「インジェクション(注射)」という作業があり(下写真)、
そこではたくさんの針がついた機械で原料肉に調味液を注入します。
ここで原料肉に大量の水を抱かせられれば市場に安価な商品を提供できますが、
豚肉だけでそれをするには限界があるのでこのような材料が使われることもあります。
大豆、乳、卵とそれぞれ原料に由来するにおい等のくせがあるため、
バランスを考えて使います。
食感がもっさりする場合は「増粘多糖類」等で調整します。
また、「リン酸塩(Na)」にも肉を結着させる働きがありますし、
「カゼインNa」も乳たん白(カゼイン)と同様、安定剤として似たような効果をもたらします。
インジェクション作業の様子。
手前が肉の投入口。
肉は注射されながら奥に進み、
反対側の排出口から出ます。
< 続く >
Posted by 鎌倉ハムクラウン商会 at
10:08
│ハム・ソーセージについて