2011年05月18日
ハムを読む(前編)
筆者が加工肉メーカーに勤めていると言うと、たまに「どんなハムがおいしいの?」と聞かれます。
難しい質問です。味覚はひとそれぞれちがいますし、
私もそう頻繁に他社さんのものを食べるわけではありません。
結果、こう答えることが多いです。
「豚肉以外のたんぱく質が使われているか、でしょうか。」
商品の内容表示にはなかなか想像力をかき立てるものがあります。
どうやって作っているのか、これは何のために入っているのかなどなど。
今回から2回に分けて、架空のハムを使って原材料表示を読んでみたいと思います。
キーワードは「水」です。
筆者が手にした▲社のロースハムの原材料表示はこのようになっていました。
一般にお店で手に入れやすいものはおおよそこのような内容だと思います。
はじめに気がつくことは▲社のハムにはたくさんの原材料、添加物が使われていることです。
鎌倉ハムクラウン商会で通常作っているロースハムの原材料表示は
「豚ロース肉、食塩、砂糖、香辛料」ですので、その差は歴然としています。
もちろん、両者とも食べていけないものは入っていません。
鎌倉ハムクラウン商会で作っている
無塩せきロースハムの原材料表示)
「〇〇たん白」というのがいくつもあります。
これらには乳化、結着、保水、食感を向上させるといった効果があります。
肉を加熱するとその中のたんぱく質が凝固します。
ハムであれミートボールであれ、それによって形の崩れない物となります。
大豆たん白、卵たん白、乳たん白も同じことで、熱を加えれば固まります。
豚肉はなまものなので個体からくる質のばらつきがあり、それが製品に影響します。
そこで安定した物をを大量生産するにはこれらのたん白を混ぜることがとても有用です。
鎌倉ハムの無塩せきウインナーの原料肉です。
肉挽きしてどろどろですが
腸に詰めて加熱すれば固まります。
ただ、役に立つだけにたくさん使われることがあります。
ハムの製造工程で「インジェクション(注射)」という作業があり(下写真)、
そこではたくさんの針がついた機械で原料肉に調味液を注入します。
ここで原料肉に大量の水を抱かせられれば市場に安価な商品を提供できますが、
豚肉だけでそれをするには限界があるのでこのような材料が使われることもあります。
大豆、乳、卵とそれぞれ原料に由来するにおい等のくせがあるため、
バランスを考えて使います。
食感がもっさりする場合は「増粘多糖類」等で調整します。
また、「リン酸塩(Na)」にも肉を結着させる働きがありますし、
「カゼインNa」も乳たん白(カゼイン)と同様、安定剤として似たような効果をもたらします。
インジェクション作業の様子。
手前が肉の投入口。
肉は注射されながら奥に進み、
反対側の排出口から出ます。
< 続く >
Posted by 鎌倉ハムクラウン商会 at
10:08
│ハム・ソーセージについて